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『まほうつかいになりたかった女の子の話』 その4

2009年05月02日 14:45

このお話もようやく最終話。
イラストも描いてみたので、併せて見てみてくれたら嬉しいです。

今北さん用あらすじ
・魔法使いの小屋でローブを着たら、脱げなくなっちゃいました。
・訳が分からないまま、口から出たのはメダパニの呪文。
・弟は混乱してどっか行っちゃって…え、あたし魔物になってる?

はじめから読む人は→1話へ

×   ×   ×

そう、それは魔物。
忌まわしい呪文の能力を与えられ、
それゆえに“導師”の名を冠しながらも、
その実体は森や洞窟の奥深くで人を惑わし、喰らう魔性の生物。
冒険者たちは“そいつ”のことを、
侮蔑と憎しみを込めて「きめんどうし」と――そう呼んでいました。

jil3.jpg

『ア゛……ア゛ア゛ァ――』

彼女の新しい口から、はじめて呪文以外の声が漏れます。
それはしわがれて甲高い、
鶏が絞め殺される時に発するかのようなうめき声。
かつてのジルの面影をどこにも残さない
――その見た目と同様――醜く異様な声でした。

『ア゛ア゛アアァッ!?
アア゛ッ、ア゛ア゛ア゛ア゛アアアアアアアア――ッ!!!』

かつての自分の握りこぶしよりまだ大きい、うすく濁った眼球から
熱く粘ついた液体が溢れ出してきます。
ジルの動揺と、困惑と、悲しみと、
完全にリンクして泣き叫ぶ、鏡の中の魔物。
その姿は、この悪夢のような出来事をまぎれもない現実として、
容赦なく彼女の前につきつけてきました。
これが、あたし。
この魔物が、このモンスターが、この肉塊が、あたし。
やだやだやだやだやだあああああああああああああああッ!!!

「あらま」

いつの間にか、その女はドアの入り口に立っていました。
ふわりとただようエキゾチックな香り。

「着ちゃったんですか、それ」

不思議なアクセントのついた、透明な声。
にいっと口元をほころばせて、
鋭い犬歯を唇の端からのぞかせます。

「“導師のローブ”。私たちにとっては魔力の補助能力を備えた
ちょっとしたおしゃれアイテムでしかないんですけど……
そういや普通の人間が着ると取り込まれちゃうんでしたっけね」

ゆるくウェーブした髪の毛をかきあげながら嬉しそうに笑う
その表情をみて、ジルは確信します。
こいつが、ケチャの言っていた魔法使い。
全てを予測した上であたしたちを誘い込み、罠にはめた張本人。
あたしの、敵。

『ガァア゛ッ!』
「気に入ってたんだけど、まあ仕方ないかな。
あなたに随分とお似合いのようだし」
『グギャ、ギャアァアア゛ァアアッ!!』
「ふふ、可愛いなあ。あの男の子よりずっと私の好み……」
『ング、ンンンンメッ、 メ ラ ミ ッ !!』

怒りにまかせて、ジルの口から出た新たな呪文。
それは彼女が知る由も無い、おそろしく高度な魔法の言葉でした。
みるみるうちに彼女の目の前に火の玉が出現し、
膨れあがりながら『敵』に向かってまっすぐに飛んでいきます。
女の表情に驚愕の色が浮かんで……
次の瞬間、炎につつまれたそれはそのまま
さっき以上の笑みにとってかわられました。
火炎呪文の光につつまれてオレンジ色に輝く、女の笑顔。
その凄惨な美しさに、
ジルはなぜか心臓が凍りつくような恐怖を覚えました。

「凄いじゃないですか。
ローブの力を借りたからって、
普通すぐに火炎呪文なんて使いこなせませんよ。
魔法の才能、あるんじゃないですか」
『!』

――それは、少女の小さな夢でした。
無邪気で子供らしい、ジルの小さな、可愛らしい夢。
それは今、悪夢となって――いえ、
悪夢をはるかに超えた残酷な現実となって
少女の身体と精神を喰らい尽くそうとしています。

気付けば、あれほど燃え盛っていた炎は
嘘のように消え去っていました。
女の身体には火傷どころか、すすの跡ひとつ付いていません。

「ふふ、そりゃそうですよ。
私の持ち物はどこまでも私の物。
主であるこの私に、
本気で危害を加えることなんてできるわけないでしょう?」

あっけにとられたジルに、優しく諭すように女は語りかけます。
持ち……もの?

「そうですよ。 そのローブは私のもの。
そしてそれを無断で身にまとって一体化したあなたもまた、
永遠に私のもの」

『永遠』という言葉が凄まじい重みを伴って
ジルの心に突き刺さります。
そんな……それじゃこれ、もう……。

「脱げるわけがないでしょう?
身の丈にあわない魔法を使ったその瞬間から、
それはもう服なんかじゃない。
あなたの皮、あなたの身体の一部になったんだから」
『ア……ア……アアア………』
「ああ、なんて素敵な顔するのかしら。
大きな顔いっぱいに絶望の色が広がって……たまらないなあ。
ほら、せっかくなんだから鏡をごらんなさいな。
さあ、さあ!」

やけに嬉しそうに話しかけてくる女の言葉を、
ジルはほとんど聞いていませんでした。
鏡を見るまでもなく、身体を包んだぶよぶよの皮が
はっきりと「生きて」いるのがわかります。
ざらざらした床の感覚も、温かい部屋の空気も、
まとわりついてくる女のすべすべの肌も、
「自分の皮」を通してはっきり知覚できてしまう、
その皮膚感覚から一瞬でも逃れたくて――
少女は、意識を失いました。


森の奥から半狂乱のケチャが助け出されたのは
その数日後のこと。
意味不明のことを口走る錯乱状態の少年を保護するにあたって、
大人の男が数人がかりでもたいへん骨が折れたといいます。
彼の精神に幾重にもかけられた混乱魔法が
完全に癒えるまでにはさらに数ヶ月の時を要しましたが、
両親や村人の手厚い看護もあって、ケチャはしだいに
元の活発な少年へと回復していきました。

しかし、あの日起こったこと……
西の森の奥で何があったかを思い出そうとすると
激しい頭痛に襲われ、大好きだったジルのこともまた
霞がかかったかのようにおぼろげなまま。
村人たちもより一層西の森への恐怖を強く抱くようになり、
生死の知れない少女を救出しに行こうなどと思う者は
誰もいませんでした。

もし仮に物好きな冒険者がこの村を訪れ、
不幸なジルの物語をききつけて西の森へ赴くことがあったとしても
きっとそのクエストは何も生み出すことはないでしょう。
彼らが出会うのは、美しく成長した捕らわれの少女などではなく、
まがまがしいピンク色の魔物。
孤独と恐怖と、自らの醜い身体への嫌悪でいっぱいの目から
涙がこぼれる様子を見たところで、何も分かるはずがありません。

倒すにせよ、倒されるにせよ、そこには魔物の――
かつて人間の少女だった、
きめんどうしの慟哭が響くばかりなのですから。


おしまい。


   ×   ×   ×

きめんどうしが好きなんですよ。
「鬼面」導師か「奇面」導師か分からないことなど
どうでもよくなるほどに好きでして。
鳥山御大による秀逸なデザインを誇るDQモンスターの中でも、
こいつのキモ可愛さは頭ひとつ抜きん出てる気がします。

とかなんとかいいながら、今回あらためて調べるまで
メダパニ以外の呪文を使えることなんて完全に忘れてました。
シリーズにもよるんでしょうけど、
メラミやベホイミまで唱えられたとは……使えるコなんだなあ。

例によって変な話でしたが、
お付き合いいただいた皆さんに改めて感謝。
ご感想などいただければ幸いです。

   ×   ×   ×

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コメント

  1. ゴゴT。 | URL | Xj9pzKFI

    Re: 『まほうつかいになりたかった女の子の話』 その4

    確かに言われて見ると、きめんどうしという魔物は
    「個々のパーツだけなら人間だし
     人型として一見バランス取れているようで実は致命的に狂っている」
    という絶妙な異形っぷりではあります。

    DQは時期を逃したり冒険の書が消えて挫折したりと
    マトモにクリアした作品は1・2・6くらいしかないのですが、
    シリーズ通してTFネタなイベントが豊富なので一度は全作クリアしてみたいですねー。
    ムーンブルクの王女は永遠のヒロイン。TF的な意味で。

    しかしこの女魔法使いさんは下手な魔王・大魔王より黒いですねw
    まあDQ本編でもラスボスは君臨しているだけで、
    直接的に悪逆非道な行動をしてるのは幹部クラスだったりすることもありますが。

    ジルさんもデルムリン島にでも隠れ住めば勇者の育ての親フラグが立つかもしれませんが……
    まあ主人の魔法使いさんが目を光らせてる内は無理かw
    高レベルの勇者一行が凍てつく波動やラーの鏡を何かの気まぐれで向けてくれる、なんて日は……
    ……当分来ないでしょうねぇ。南無。

  2. カギヤッコ | URL | /k8K4ErU

    Re: 『まほうつかいになりたかった女の子の話』 その4

     そう言うオチと着ましたか。
     まあ、「素人が超アイテムを手に入れて破滅」と言うのは定番とは言えまさにこちら流の不条理全開ですね。
     イラストはちょうどきめんどうしの中のヒロイン(しかも裸)の体の位置とのフィット感が別の意味で不条理で…(おいおい)
     確かにこの流れだと何かの弾みで元に戻れてもその心までは…と言う感じにはなりそうですね。
     そのイメージイラストを想像するのは反則でしょうか。

     ライトに行けば他にも7の姫様とか変化球に行けば5で選ばれなかったヒロインが何かのアイテムでモンスターに変化(擬態?)して同行と言うのもありですけど…?

  3. 現在楽識 | URL | -

    Re: 『まほうつかいになりたかった女の子の話』 その4

    きめんどうしでしたかw

    ふむふむ、コレはまた哀れというか、面白いというべきか、この後ジルは勇者と魔法使いにおそわれるんでしょうねぇ~~

    ふう、暇があれば……またChaosな物語を書きたいものですね~~男体化系等とモンスター化に近いものを……

    ネタは出来上がってるんですよ、でも、暇がない……OTL

  4. K | URL | -

    Re: 『まほうつかいになりたかった女の子の話』 その4

    そうだ!!きめんどうしだ!!
    3話の時、どのモンスターか分かってたけど名前が浮かんでこなくって・・ドラクエ勉強しないといけませんね。

  5. greenback | URL | zH0ZGDao

    Re: 『まほうつかいになりたかった女の子の話』 その4

    ゴゴT。さん
    豚やカエルもそうなんですが、どこか人間らしさを感じる造形って、
    かえって異形感をかきたてられて変身対象に向いているような気がします。
    そしてムーンブルクの王女はガチですね。
    変身後に誰にも気付かれないまま生活しているっていう設定が神がかってますねw
    あれでこっちの世界に目覚めた人もいるんじゃないのかなあ。
    ジルもかわいそうな子なんで、いつかラーの鏡の恩恵にこうむれればいいなあと思います。
    思ってるだけで描きませんがw

    >カギヤッコさん
    たしかに定番ですね。
    本人が一度も美味しい思いをしないところがよりヒドいですがw
    けっこう「フィット感」を出すのは苦労したので、そう言って頂けると嬉しいです。
    7の馬姫様ははげしく萌え5の振られた方が変化、という妄想はすごく良いですね。
    こっち寄りだとドロヌーバなんかステキかも。

    >楽識さん
    この後は…どうなっちゃうんでしょうw
    お持ちの「ネタ」がものすごく気になるところですが、時間がないのは仕方ないですね。
    ちょっとずつでも書き溜めていっていただければいいかと。
    気長にお待ちしてます。

    >Kさん
    無理に勉強するようなことじゃないですけど、TFネタがけっこう多いので
    そういう目線でシリーズをおさらいしたら
    また新しい萌えポイントが見つかるかもしれません。

  6. 現在楽識 | URL | -

    Re: 『まほうつかいになりたかった女の子の話』 その4

    ふふふ、かなりChaosな予定ですよw

    ただ、男体化だけじゃなく、女体化、異形化とかまたまたかなりのChaosっぷりになりそうですねぇ~~

    かなり危険かもしれませんw

  7. カギヤッコ | URL | /k8K4ErU

    Re: 『まほうつかいになりたかった女の子の話』 その4

    >ジルもかわいそうな子なんで、いつかラーの鏡の恩恵にこうむれればいいなあと思います。
    >思ってるだけで描きませんがw

     なんともはや(苦笑)
     でも、こちら流で行けば何かの弾みで手に入れたラーの鏡の効果で元の姿には戻れたが、その場所は魔物がうようよでうかつに出る事は適わないし、「魔物に戻れる」アイテムもない。
     で、仕方なく変化の杖とかで「元の姿に擬態」してやり過ごし続けるのだった…と言う事になるのでしょうか。
     それこそ「人間の少女の姿に化けられるモンスター」とか言う触れ込みで?

    >こちら流ならドロヌーバ
     確かに今回の流れだとありますね…。
     「旅に出た」と言う準ヒロインの消息を聞き無事を祈る主人公たち、しかしその彼女は…と言う感じになりそうで。
     モンスターのタイプはともかく、ライトに行けば普通に尽くす物語になりそうですし、うまく戻れば本編終了後そのモンスターは行方不明。
     そしてそのあと訪れた町で一回り成長した準ヒロインと再会…と言う感じで。
     こちら流ならやはりモンスター式略奪愛(ヒロインをモンスター化して自分がそのヒロインに擬態して…)と言う事になるのでしょうか。(大苦笑)

     個人的には当時のエニックスから出たDQ4ワールド漫遊記より本編終了後気まぐれでモンスターを家臣にする為の武闘会を始めたエンドールの王様を止める為、とらおとこがたの縫いぐるみを着て乱入した姫様の話がかなりポイントです。

  8. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『まほうつかいになりたかった女の子の話』 その4

    >楽識さん
    それは楽しみだなあw
    カオスでも危険でも大歓迎です。
    いつまででも待ってますので、じっくり満足行くものを仕上げてください。

    >カギヤッコさん
    あ、いやその、なんかすいません(汗
    変化の杖での擬態ネタはいいかもしれませんね。
    フリーダさんにバレたらペナルティでもっとひどい姿にされちゃうかもしれないけどw

    5の変装話はちょっと昼ドラみたいで楽しいなあ。
    うっかり魔物の姿で迫っちゃったりとかw

    とら娘さんの話は読んだことありますね。
    イラストもあったような…けっこう可愛いんですよね。

  9. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『まほうつかいになりたかった女の子の話』 その4

    >05/04 14:46拍手コメントの方
    ありがとうございます。
    新しい視点を提供できたようで何より。
    マリベルのくさったしたい化はほんと絶品でしたね。
    これからはぜひこういう目でDQを楽しんでみてくださいw

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