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獣化計画アナザー 悪夢の章 その3

2009年11月08日 01:08

というわけで連載再開。
思いつくままに書き散らす今回の試み、
果たして着地点はどうなるのか?
……不安ですなあ。

前回までのあらすじ
・ある朝、なんか変な夢を見て起きたゆうかちゃん。
・気を取り直して渋谷に遊びに来たら、なんかデジャブ祭り。
・それは別次元の彼女自身からのメッセージだったのでした。

その1から読む人はこちらからどうぞ。

   ×   ×   ×

なんだか、ひどい夢を見ているような気がした。
声を掛けてきた女の笑顔。
その後のやりとり。
そして道玄坂へと向かっていく、女の後頭部。
そのひとつひとつに、いちいち不穏な既視感がついてまわる。

この先に、何かが……何かとても良くないことが待っている。
ふと頭に浮かんだそんなイメージをどうすることもできないまま、
あたしは迷っていた。

本当にこのまま、試食会場とやらについてっていいのかな?

「あの」
「はい?」

振り向いた女は相変わらず営業スマイルを崩していなかったが、
どこか凄味のある、抗いがたい空気をまとっていた。

うう、これはきっついな。
特に理由もないのに、今さらやめとくなんて言い出しにくいぞ。

「いやその、試食するのってTFドーナツ、だったっけ」
「ええ、TFドーナツでございます」
「……『TF』って、何の略?」

それは、苦し紛れにひねりだしたどうでも良い質問だった。
女はにこやかに答える。

「それは食べてみてからのお楽しみ。
きっとびっくりなさいますよ」

特に不自然な返しではないと思う。
でも、返答の直前に女が見せたきょとんとした表情、
そしてその直後に浮かび上がったこの上なく愉快そうな顔は、
不気味と呼べるレベルをはるかに超えて――
たまらなく恐ろしいものだった。

   ・   ・   ・

そう、それでいい。
あんたの本能はとっくに、そいつの本性を見抜いているはず。

だって、あたしだってそうだったんだから。

不吉な予感を抱きながら、それをバカな妄想だと握りつぶして
つまらない食い意地に身を任せた結果が――この始末だ。
悔やんでも悔やんでも悔やんでも、どれだけ悔やんでも
悔やみきれない、あの日のあたしのバカさ加減。
でも、あんたは違う。
きっと……違って、いますように。

いつの間にか、あたしは祈っていた。
鶏の脚のような短い両手を不格好に組んで、
あたしの想いが『彼女』に届くことをひたすら祈っていた。

   ・   ・   ・

その時。

『お・ん・なぁごっころはーまるで猫の目よゥ……』

あたしの携帯が、着信を知らせる「猫目慕情」を鳴らしはじめた。
慌てて取り出し、耳に当てる。

「あ、もしもし? え、何もう着いたの? 早かったじゃん」

受話器の向こうには誰もいない。
着メロを鳴らしたのも、この会話も、みんなあたしの一人芝居だ。
全ては、この場を逃れるため。
普通に断れない自分の気の小ささがつくづく情けないが、
今はそれどころじゃない。

「あたし? 今道玄坂だけど……え、分かったよ、すぐ行くから」

ぴ、と切る振りをして、できるだけ残念そうな顔を作る。

「あの、ごめん、ちょっと急用ができちゃって」
「そのようですね」
「食べてみたかったんだけどね、ほんとごめんね、それじゃ」

   ・   ・   ・

くるりと女に背を向けた『彼女』を見て、あたしは涙ぐんでいた。

良かった。
本当に良かった。

あたしが、あたしのままでいる世界。
人間の女として生きていく、幸せな世界。
それがたとえ夢でも、どこかにそんな世界があると思えることは、
今の――ティラノサウルスの体に閉じ込められたあたしにとって、
たまらなく大きな喜びだった。

足早に駅へと向かう『彼女』に、小さく「ありがとう」を言う。
それが聞こえることはないと分かっているけど――

――え?

そこであたしは、奇妙なことに気付く。
いつの間にか彼女が右手に持っている、小さな紙袋。
そこに染みを作っている、あれはおそらく食用油。
そして何より、袋に書かれた、「TFドーナツ」の文字。

いつの間に、どうやって『彼女』がそれを――
その、悪魔のスイーツを手にしていたのか、
感慨に浸っていたあたしには分からなかった。

ただ、確実に分かったのは、このままじゃダメだということ。
悲劇は回避できたわけではないということ。
なんとしてでも彼女に、それを食べさせてはならないということ。

いつしかあたしは我を忘れ、渾身の力を込めて叫んでいた。

   ・   ・   ・

その時、あたしの頭に轟音が鳴り響いた。
それはとてつもなく大きく、怖ろしい叫び声。
何か生き物の声には違いないんだけど、
それすらにわかには信じられないような。
今までに一度も聞いたことのない、太く荒々しい咆哮だった。
鼓膜ではなく、もっと奥……そう、
脳にダイレクトに訴えかけてくるようなそれはしかし、
幻聴で片づけるにはあまりに生々しいものだった。

あたしは、心のどこかで理解していた。
いや、理解と言えるほど確かなことではないのだけれど、
直感がそれを知らせてくれた。
その“声”が、今朝からずっと尾を引いている悪夢と同じ世界、
同じ場所から発せられていることを。
その発信者がいま、たまらなく焦っていることを。
今のあたしを見て、悲痛な想いに捕らわれていることを。

謎のアンケート女が、別れ際に手渡してくれたドーナツの袋。
どうやら悪夢の“声”には、これがお気に召さないらしい。

―――ざまあ見ろ、と思った。

どこの誰だか知らないけど、
おかげさまで朝からずっと気分は最悪なのだ。
せっかくの休日に、これ以上水をさすような真似は許さない。

もっと焦ればいい。
もっと苦しめばいい。

あたしは、NOが言える日本人なんだ。
アンケート女だって上手にあしらって見せたじゃないか。
あたしが何を食べようと、決めるのはあたし自身。
誰にだって指図なんてされないんだから――!

   ×   ×   ×

ここ2週間で最後まで書きあげちゃうはずだったんだけどなあ。
この先はやっぱり出来てません。
でもきっと次回で終わると思うんだ。

頑張ります。

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(2005/12/26)
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コメント

  1. 現在樂識 | URL | -

    Re: 獣化計画アナザー 悪夢の章 その3

    あまりにもかわいそう過ぎる展開ですねぇ~こう救いがないと言うべきかw助けてあげたい半分、そこまで生意気な奴は地獄に落ちろと思う半分。

    こういう平行世界ネタは俺はスキなのでさあ、どうなるでしょうかねぇw

  2. greenback | URL | 1joVCph6

    Re: 獣化計画アナザー 悪夢の章 その3

    >現在樂識さん
    コメントありがとうございます。
    すっかりレスが遅くなっちゃってすいません。
    生意気といっても何にも知らないから仕方ないんですけど、この人の場合バッドエンドはほとんど確定済みなのでw

    なんとか週末中に上げられるように頑張ります。

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