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『タナボタ』前編

2010年11月30日 02:36

前回のエントリでお伝えした
toshi9さん主催の「入れ替えモノまつり」は、
かつてないほどの規模と賑々しさの中で幕を閉じました。

SIKISI-003B2a.jpg

こんな色紙まで頂いてしまいましたよ。
なんでしょうこのほっこりした気持ち。

やっぱり「入れ替え」って間口というか、
誰がどうやって誰と入れ替わって、
それからどうなるのかというバリエーションの広さが
これだけ多くの人に愛される要因になってるのかなあ。
投稿作品もほんとに多岐に渡っていましたし。

おかげさまで私のような嗜好の者にも
組み合わせによっては美味しく頂けてしまうわけです。
そんなこんなで久々に入れ替わりネタを書いてみたのが
今回のお話。
お祭りが終了したのでうちでも公開させていただきます。

   ×   ×   ×

――やった。
成功だ。

目の前にいるのは背が小さくて、
胸がぺったんこで――色気のかけらもない幼児体型の女の子。
昨日までの、ううん、さっきまでの「あたし」だ。
やたら色白でそばかすの浮いた肌も、
天パでぐりんぐりんの髪の毛も、
いちいちコンプレックスだった「あたし」。
でも、もう違う。
あたしはもう、あんなちんちくりんじゃないんだ。
tanabota.jpg

呆けたようにこちらを見つめている「あたし」の身体。
そこに宿っているのは、今まで「この身体」に入っていた魂だ。
池袋のクラブで出会った、初対面のきれいなお姉さん。
飲んでたとはいえ、ちょろいもんだったなあ。
なにげなく話しかけて、うまいこと調子を合わせて。

「へえ、大学生なの。可愛いからもっと若いかと思った」
「れっきとした大学生ですよ。明教大国文科1年」
「お、奇遇だね。あたしも明教だよ」
「ほんとですか? 何年生?」
「いやいやとっくに卒業してるから。OB、OB」
「じゃ先輩なんですね」

適当に会話を続けながら、注意深くチェックする。
見た目は100点。身につけてるものもちゃんとしてるし、
お金に苦労してる感じもなさそう。
数時間はしゃいでもテンションが落ちないところを見ると、
健康面でもたいした問題はないと見た。
うん、理想的。

「あー楽しいな。ねえねえ後輩ちゃん、この後ヒマ?」
「え?」
「良かったらカラオケでも行かない? 二人で」
「あ、はい! 行きます行きます!」
「おーし決定ぃ!」

タナボタとはこのことだと思った。
どうにかして二人っきりになる口実を考えてたら、
向こうから提案してくれるなんて。
店を出て、近くのカラオケボックスに入って。
さっそく選曲を始めようとするお姉さんに、
あたしは小さな石のついたブレスレットを差し出した。

「あ、あの、これ……つけてもらえませんか」
「わあ、かわいいじゃん。何これ、プレゼント?」
「あ、はい」

かわいいかどうかは微妙だと思う。新宿の路上で、
どこの国の人かもよく分からない女の子に売りつけられた、
安っぽくて悪趣味な銀の腕輪。
こんなインチキ臭い商品に5000円も出したんだから、
あたしの物好きも相当なものだと思う。
それに宿るという「力」を、
本気で信じたわけじゃなかったはずなのに――
まさか、本当に使えるなんてね。
お姉さんが装着したのを確認して、あたしも同じ形の
ブレスレット――こっちは金色だ――を右手に通す。

「あ、ペアになってるんだ」
「はい。お近づきの印というか。
それであの、手を、握ってもらっていいですか」
「いいけど、一体なんで……ひゃっ!?」

ばしん。
差し出したあたしの右手にお姉さんが触れた瞬間、
火花が身体を走り抜ける。
冬場にドアノブなんかでパチッとくる静電気、
あれを10倍くらいにした感じ。
そのままぐにゃりと視界が歪んで、一瞬ブラックアウトして。
そう、本当に一瞬。
時間にしたら1秒にも満たないんじゃないかな。
気付いたときには、
こうして相手の身体の中におさまっているってわけ。
 
「お近づきの印に、身体を入れ替えてみちゃいました。
ふふ、びっくりしました?」
「いれ、か……え?」

ぽかんとした表情のまま、
身体のあちこちをぺたぺたと触りだした「あたし」。
その行動があまりに予想通りで、
あたしはおかしくてたまらなかった。
きっとまだ現実味がないのだろう。
あたし自身、最初に入れ替わった時はそうだったからよく分かる。
でも、本当にショックを受けるのはこれからなんだな。

「悪く思わないでくださいね」
「……?」
「このブレスレット、使用回数が決まってるんです。
全部で3回。そして今のがその、
最後の入れ替わりだったんですよね」
「……さい、ご?」
「そう。だから私たち、もう元に戻れないんです。
ほら、ここについてる石、割れちゃってるでしょ?
もう使えないんですよ。
これからずっと、入れ替わったまんまなんです」
「!」

ふふ、驚いてる驚いてる。
いい気味だよ。あんな……ヤケになって行き慣れないクラブに
出かけるような精神状態にあったあたしを、
じろじろ見てきたりするからいけないんだよ。
どうせあたしのことバカにしてたんでしょ?
貧相な身体だと思って、優越感に浸ってたんでしょ?
だから、決めたんだ。
ブレスレットを最後に使う相手は、この人にしようって。
身体を入れ替えて、あたしのみじめさを思い知らせて……
ついでにあいつのことも見返してやろうって。

「そ、それって、ほんとなの?」
「ええ」
「一生、この身体のまま?」
「ええ」

ああゾクゾクする。
鈍感なお姉さんも、ようやく飲み込めてきたみたいね。
さあどうする? 泣く? 叫ぶ? 怒る?
今さら何やったって、無駄なんだけどね。ふふふ。
 
「そうなんだ……」

ぽつりとそうつぶやいて、
その後にとった「あたし」のリアクションは、
予想したどのパターンとも違っていた。

ほら、なんて言ったっけ。
不思議の国のアリスに出てくる、あの変な猫。
あいつみたいに、歯をむき出しにした満面の笑みを浮かべたのだ。
今まであたし自身が鏡で見たことのない、
いやらしくて気味の悪い笑顔だった。

「な、何がおかしいのよ」
「3回が限度か。おかしなもんだね、こっちと同じだ」
「え?」
「なんとか使いは引かれあう、みたいな?」

にやにやしながら、上機嫌で「あたし」は言葉を続ける。
でも、言っていることの意味がちっとも分からない。
この女……ショックのせいでどこかいかれちゃったの?

「ああそうだ。同じと言えば、今日が3回目だってのも同じだ。
最後だ。残念だなあって思ってたんだ。
あは、あはははははははははっ!」

もう我慢できない、というように「あたし」は爆笑をはじめた。
その異様なテンションについて行けず、
あたしは次第に正体不明の不安にとらわれ始めていた。

「ちょっと、何言ってんの?
意味わかんない。同じってどういうこと?」
「すぐ分かるよ。ほら、痒いでしょ」

言われてはじめて気付いた。いつの間にか、
無意識に自分が左腕を掻いていたことに。
綺麗にマニキュアを塗った長い爪が、肉に食い込むほど強く。
すでに肘のあたりには縦横にみみず腫れが走り、
けっこうひどいことになっている。

「3回目の”時間切れ”が近づいて来て、考えたんだよ。
この姿でいるうちにそのへんの女の子に声かけて、
どっか連れ込んだりできないかなって。
で、ターゲットを探してるところに、
お嬢ちゃんと目があっちゃったわけ」

痒い。痒い。痒い。
腕だけじゃなく、脚が、胸が、背中が痒い。
あたしは必死になって全身を掻きむしる。

「そういう大人っぽいスタイルも嫌いじゃないよ?でも、
ほんとはこういう素朴でカワイイ感じの方が好みなんだよね。
二人っきりになったら正体あらわして、
あわよくばやっちゃおうかと思ってたんだけど……
この展開は読めなかったなあ。
まさか身体を入れ替えられるとはね。いやーびっくりした」

掻けば掻くほど、痒くなる。
頭の中が熱に浮かされたようになって、
「あたし」の言葉を理解できない。
というより、話を聞いていられない。
何が起きているのか、どうすればいいのか。
生まれてから一度も味わったことのない極限状態の中で、
あたしはいつしか涙を流していた。

このままじゃほんとに、頭がどうにかなっちゃう――!

   ×   ×   ×

いざ載せていただいてみたら、
「じゅうはちきん」指定されなかったことに
びっくりしました。
たしかに考えてみたらエロは入ってないんですよね。
でも、私にとってはオカズ以外の何物でもないわけで、
考えてみると健全と不健全の境界って不思議なもんです。

というわけでといいましょうか、
普通に18歳未満は見ちゃダメなイラストを
追加した後編に続きます。

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