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『レクイエム』 前編

2008年07月13日 02:21

みなさんもご存知ですね?
憂鬱kenさんの『★TF DAYS★‐白の我儘‐』が
100万HITを達成されました!
まことにおめでとうございます☆

お陰様で当サイトは100万Hitを達成!日頃のご愛玩、どうもありがとうございます。...
100万ヒット達成


……あ、遅い?
どうもすみません。

素敵な記念絵をいただいたので、
せっかくだから何かSSっぽいものを……と思っているうちに
あっという間に一週間以上が経ってしまってました。
誰かが時間飛ばしたんじゃあるまいか。
   ×   ×   ×

金魚すくいにリンゴあめ、射的に型ぬき。
遠くに聞こえる神輿の掛け声。
笛。太鼓――祭り囃子。

日が落ちてちょうちんに灯りが入り、
神社の境内は色とりどりの浴衣に身を包んだ人々で溢れる。
仲の良さそうな家族連れ。
しっかり手をつないだカップル。
わいわい騒ぎながらスーパーボールをすくっているのは、
男子中学生の群れだ。
みんな、笑顔。
心から、この夏の日を楽しんでいる。

私だって、楽しみにしていた。
新しい浴衣を仕立てて、髪飾りだってお気に入り。
何より、大好きなあいつと、
はじめて2人で迎える夏なんだから、嬉しくないわけがない。

なのに――何なんだろう、この気持ち。
なにひとつ問題ないのに、心の中にぼんやりと霧がかかったようで……
どうしても、晴れてくれない。

「おう」

あ、あいつだ。
けっこう甚平、似合ってるじゃん。
「遅いよー」などとふくれながら、笑顔をつくる。
よし、今からだ。
これから思いきり楽しめば、変な気持ちなんか吹き飛ぶはず!

「お、なんだあれ。面白そうじゃね?」

まずは腹ごしらえとばかりに買った焼きそばをほおばりながら、
あいつが呟く。
視線の先には――げ。

「えー、やめようよー」

今時ちょっと見かけない、ペンキ塗りのキッチュな看板を掲げて
その見世物小屋は建っていた。
こいつ、顔はいいけど、趣味が悪いんだよね。
なんでモノ食いながらこんな所に惹かれるんだ。
ほんと意味分かんない。

「さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。
坊ちゃん嬢ちゃん、兄さん姉さん、紳士淑女の皆さままで、
見れば孫の代までの語り草。
こちらに控えましたるおおかみ娘、花も恥らううら若き乙女の、
あっと驚く悲劇の物語。
生きた伝説、蠢く怪異。
目の当たりにしたければ寄ってらっしゃい見てらっしゃい……」

――結局、入ってるし。
まあ仕方ない。
言い出したら聞かないのは分かってたことだ。
それにしても――なんだろここ。
薄暗い照明、薄汚れた妙な装束に身を包んだ興行師。
よどんだ空気。
ほこりっぽく、どこか動物園のような匂いがする。
客は極端に少なくて……あたしたちと、
はやくも酔いつぶれて眠っている中年のおじさんだけ。
よくこれで商売が成りたつものだと思う。

「これよりお目にかけたる哀れな娘は、
あまたをその手にかけし粗忽者、その一人娘にございます。
輝くばかりの花のかんばせを誇りしも今は昔、
親のむくいが子にたたり、齢15の折より毛を生じ、
牙と爪とをぞろりと伸ばし、かく怪し身とぞ落ちませり。
見るも涙、語るも涙、さあさあご覧に入れましょう」

それ、日本語?
なんであんな変な言葉遣いなんだろう。
えーとつまり、
に取りつかれた女の子がこれから出てくるってこと、かな?
あーやだやだ、ほんと趣味悪いんだから。
まあどうせ、入場料250円の見世物小屋だ。
なんか適当な白塗りかなんかした女の子が出てきて
生肉でもかじったりするだけなんだろうけど……

なんだろう。
どんどん、心の中にもやもやが広がってくる。
不安――なのだ。
ぎゅ、とあいつの手を握る。

「なんだ怖いのか?」

能天気な声であいつが笑う。
――うん。
怖い。
なにか、すごく良くないことが起こるような気がして……怖い。

ふ、と照明が暗くなって、
ひどく音質の悪いステレオから、三味線の音が流れ出す。
べんべんべんべん。
まるで、私の心臓を弾くように、無神経にざらついた音が、
せまい小屋の中にこだまする。
べんべんべんべんべんべんべんべんべん。
ああ、うるさい! うるさい! うるさいッ!

――べべん!

ふ、と光が灯る。
ステージの上に檻が置かれ、その中に少女が1人、座っていた。
呆けたようにこちらを見つめ、
半裸の身体をぼろ布の中に縮こまらせて……
だが、やがて自分の手に目を落とし、はっと息を呑んだ。

「!? ……って、……ぁあた、あた、あたし、の、手ッ!!」

次いで、口に手を当てる。

「ことっ、こ、ことばっ! しゃべ、れ、るぅうッ!?」

薄汚れてはいるが整った、どちらかといえば美しい顔を歪ませ、
目に涙を浮かべて、彼女は自分の身体じゅうをなでさする。

「あ、あああたしッ!
に、に、にんげんに、も、もど、戻れ……たのぉおおっ?
ゆ、ゆ、夢じゃ、な、ななぁあはははははッ!
あはははははははははっ!!
あ、ああ、ああああありがとうございますぅううっ!!!」

呆気にとられる私たちと興行師を置き去りにして、
少女は狂ったように笑い出した。
これは――何? どうなってるの? どんな趣向?
あまりに予想外の展開に、頭の中が疑問符でいっぱいになる。
じわりとつめたい汗がにじむ。
鳥肌がたつ。
いまだ笑い続ける少女の、すぐ隣。
白く半透明なものがゆらゆらと浮かんでいる。
煙? いや、違う。
あれは――なにかはっきりとした意志を持ったものだ。
いつくしむように少女をながめて、声なき声で語りかける。

“礼にはおよばぬ。
もとより、そなたの一族に恨みなどない。
単に我がヨリシロとしてふさわしい体質だったというだけのこと。
よりふさわしい者が現れれば――そなた自身にもう用はない。
のう、そこな女?“

ふわり、と身体を翻して、そいつはあろうことか
――私に語りかけてきた。
ああ、だめだ。
だめだ。
この感じは――だめだ。

   ×   ×   ×

……すみません、続きます
次はほんとスグうpする所存なので、ひらにご容赦ください。

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