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『涙目王女』 その4

2008年10月19日 00:47

はじめから読むひとは→1話へ

   ×   ×   ×

ぱちん。
金具を留め、小さくため息を漏らすと、
今までの動悸が嘘のように静まり、代わって何か温かく、
安らかなものがリヴェラ姫の胸を満たしました。
目に入るものが、今までよりほんの少し輝いているような……
吸って吐く空気までもが、今までよりほんの少し甘いような……
あるいはそれは錯覚なのかもしれません。
薬ならまだしも、
そんな効用のある装飾品など聞いたこともありません。
しかし、これは異国の品。
牛車商人がはるばる運んできた、とっておきの品ならば――

「ああ、思った通り」

フリーダの声で、姫は我に帰りました。
人前で呆けたようになっていた自分に、少し頬を赤らめます。

「……どうかしら」
「思った以上によくお似合いです」
「そ、そうかな」

フリーダが、牛車から大きな姿見を取り出します。
そこに写った自分の姿を見た瞬間、
姫は息をのみました。

「あ……」

その小さなイヤリングは、確かによく似合っていました。
彼女の艶やかな髪の中にあって、
その中に埋もれるでもなく、
過剰に存在を主張するでもなく……
今まで姫が目にしてきた数々の豪奢なイヤリングと比べても、
指折りの一品と言ってもいいでしょう。

しかし、姫の目を奪ったのはその宝石ではありませんでした。
彼女自身の顔、というより全身から放たれている、その輝き。
どこが、どう変わったのかは分かりません。
しかし、確かに鏡の中の姫は、
以前の彼女の天真爛漫な可憐さに加えて、妖艶な……
いうなれば、女性としての魅力が
はっきりと増しているように思えたのです。
フリーダが意味ありげに顔を近づけて、耳元で囁きます。

「このイヤリングには、女性の美しさを引き出す力があるんです。
もちろん、私やそんじょそこらの
平凡な女がつけても意味はありません。
姫のような、本当の美貌をお持ちの女性だからこそ、
その奥に眠っている美しさを引き出す効力を発揮するんです」
「そんな、本当の美貌だなんて……」
「謙遜することないでしょう、姫がお美しいのは、
ほら、火を見るよりも明らかじゃありませんか」

フリーダの言葉に、嘘はありませんでした。
鏡に映しだされているのは、絶世の美少女にほかなりません。
当のリヴェラ姫本人が、そのことを認めざるを得ませんでした。

おそらくは非常に高価であろうそのイヤリングを、
フリーダは惜しげもなく姫に献上しました。

「ふさわしい主に持っててもらったほうが、その子も幸せでしょう」

その声は本心からの喜びにあふれ、
お世辞の色は一切ありません。
他にも魅力ある品々を気前よく進呈し、
営業許可の見返りにしても過分であるとした王家が
その代金を支払おうとするのを押しとどめて、
牛車商人はお城を去っていきました。
帰り際、フリーダは日に焼けた顔に
いっぱいの笑みを浮かべて言いました。

「またいつか、お目にかかる日もあるでしょう。
その時を楽しみにしてますよ」
「もちろん、私も楽しみにしてるわ! ありがとう!」

   ×   ×   ×

5話へ

また逢う日までまた逢う日まで
(1992/11/26)
尾崎紀世彦

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コメント

  1. 茶 | URL | XiwlzsDU

    Re: 『涙目王女』 その4

    まずプロフィール画像に笑わせていただきました。
    こういうリアクションができる子は、姿を変えられても簡単にはめそめそしたりしないタフなイメージがあり、好きです(タイトルを考えると不安でもあり、あるいは小説内では可哀想なヒロインをしっかり演じきるのかもしれませんが)。



    ところで……あれれ?

  2. | |

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  3. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『涙目王女』 その4

    >茶さん
    笑っていただけて何よりです。
    本編ではしっかり涙目になってもらう予定ですが、
    さしあたり今のところはこんなノリもありつつ、というw
    今回は肩すかしで申し訳ありません。
    搦め手でまいります。

    >非公開コメントさん
    ご指摘ありがとうございます。
    えーと、気のせいです!
    嘘です。すっかり忘れてました。すいません。
    まあ、よく似た流通ルートのよく似たアイテム、ということで
    ご理解頂ければw
    これからの展開は……まあ、
    いつも通りといえばいつも通りなんですけどwww

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