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『涙目王女』 その16

2008年12月06日 00:12

どうでもいいことですが、
今回の部分がこのお話で一番最初に書いたパートです。
長編にする予定すらありませんでしたw

今北さん用あらすじ
・自分の偽者を前に、なすすべもないリヴェラ姫。
・姫の美しさを保ってきたイヤリングを砕くよう、指示する偽者。
・へんな煙出た。

最初から読む人は→1話へ

×   ×   ×

身体に満ちていく、まがまがしい“そいつ”の煙。
姫の五感は、ありありとそれを感じていました。
いまやそれは、彼女のキャパシティを
はるかに超え――溢れんばかりになっています。
熱く、黒く、ひどく不愉快な何かが、
毛穴のひとつひとつから噴き出すような感覚。
しかしそれは、噴き出すことはありませんでした。
そのかわり、姫の皮膚の内側に留まり、
そこで膨張を始めたのです。
みりみりと魔界の蟲が鳴くような、
変にかん高い音を立てながら、
――そう、姫の身体は変形を始めていました。

「ほら皆さん、見てください!」

勝ち誇ったように、偽者のリヴェラ姫は叫びます。
周りで見ている近衛兵たちやレオナルドの口からも、
感嘆の声が漏れています。

「これが、こいつの正体なんです!」
「ちがあっ、があああああああああああああッ!!」

抗議をしようと開いた姫の口から出るはずの言葉は、
苦痛の叫びにとってかわられました。
脈がひとつ打つごとに、呼吸をひとつするたびに、
リヴェラ姫の身体は奇妙に膨らんで行きます。
ぱきぱきという音がし始めたのは、
骨の形までが変わり始めたということなのでしょうか。
額にびっしりと浮かんだ冷や汗をぬぐって、
その異様な感覚に、姫は自分の手を見やります。

「ひっ」

太く、丸く変形しただけではない、
人のものとは思われぬ手が、そこにはありました。
波打つように全身を襲う苦痛と驚愕のあまり、
リヴェラ姫は謁見の間の床に倒れこんでしまいました。
苦しみに転げまわる姫の身体からは、
ありとあらゆる体液がほとばしり、
絨毯に汚らしいしみを作っています。
その側で嬉しそうに笑っているもう一人の姫を除いて、
誰も、何もできませんでした。
何も言えず、ほとんど動くことさえ忘れて、
その惨状を見つめていることしか出来なかったのです。

――助けて、だれか。
お父様。
パブロ。
レオナルド王子。
だれか、ねえ、だれか…
死。
死んじゃう。
死んじゃう。
死にたく…ないよぉ…

『死ニタク、ナイノカ?』

いつぞや、イヤリングから聞こえてきた声だけが、
姫の内なる叫びに応えてくれました。
それが幻なのかどうかすら、
今の姫には考える余裕はありません。

――え……ええ。
 死にたくない。
 死にたくないよ……

『イイダロウ』

はっきり、笑いを含んだその声。

『……コレカラモ、長イツキアイニナルンダシナ』

その瞬間、姫は理解しました。
この声の主は、さっきの煙の化け物。
イヤリングに潜んでいたこいつが、
すべてを狂わせていたことに。
こんなヤツに、助けを求めなきゃいけないなんて……ッ!

『フフ、グフフ、グハハハハッハッハッハッハッ!
デハ、仕上ゲニ参ロウカ、姫君』

だめッ!
いや、嫌、いやああああ――――ッ!!

ぱちん、と何かがはじける音がしたような気がしました。
リヴェラ姫の視界がゆっくりとぼやけて……やがて、
そのすべてが闇につつみこまれていきました。




どのくらい時間が経ったのでしょう、床にうずくまっていた姫は、
のろのろと立ち上がりました。
彼女の意識は混乱していました。
ひどくけだるく、身体が重く感じられはしたものの、
さっきまでの苦痛はどこかに消えうせています。
その開放感によって、
今までの出来事にまるで現実味を感じられず、
まるで、悪い夢を見ていたような気分になっていたのです。

凍りついたように彼女をみつめている人々に向かって、
自分の無事を示そうと、にっこりと笑顔を作りました。
そして、おぼつかない足取りではありましたが、
ゆっくりと一歩ずつ、
レオナルド王子の方へ歩き始めたのです。

……大丈夫。
私は大丈夫……でも、手を貸していただけませんこと?

呆然と彼女を見つめている王子のもとにたどり着き、
ゆっくりと手を差し伸べました。
するとどうでしょう、王子は彼女の手を取るどころか、
へたへたと座り込んでしまったのです。
まるで、そう、腰を抜かしたかのように。

「?」

不審に思ったリヴェラ姫は、
レオナルド王子の顔を覗き込みます。

「……う」

王子が口を開きました。
姫が安心して王子に抱きつこうとした次の瞬間、

「うわああああああああああああああああっ!」

王子の口から、大きな大きな悲鳴が発せられたのです。


   ×   ×   ×

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コメント

  1. | |

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  2. greenback | URL | xB9R6Xc2

    Re: 『涙目王女』 その16

    >12/06 00:23 拍手コメントの方
    おかしなもの読ましてしまってすみません。
    姫には……まあ、行く所まで行っていただきましょうw

    >非公開コメントの方
    激励ならびにお返事ありがとうございます。
    キャラクターのビジュアルを決めて書くのは
    はじめての試みだったのですが、
    お気に召したのならこんなに嬉しいことはありません。
    口調やなんかはにこちんたーる時代からよく出てきてた
    謎の加害者さんの延長なんですけどねw
    そこにプラスアルファで、
    あなた様を含め、いろんなTF作家さんの影響を受けてます。

    残りのパートも頑張ります。

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