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『涙目王女』 その18

2008年12月22日 00:14

それではぼちぼち、後半戦まいります。

今北さん用あらすじ
・お姫様は魔女にはめられて、豚のおばけになってしまいました。
・魔女はお姫様にすりかわって、王子と結婚式をあげました。
・おしまい……え? 違うの?

最初から読む人は→1話へ

   ×   ×   ×

かくして、この上ない晴れの日に
シュレアル王国を襲ったこの上ない珍事は無事、解決。
『姫になりすましていた雌オーク』は捕らえられ、
城の地下牢奥深くに幽閉されました。
魔物は涙を流しながら、必死に何かを叫んでいましたが……
いかんせん、どう聞いても豚の鳴き声。
そこに何かしらのメッセージがこめられていたとしても、
誰に伝わろうはずもありません。

笑顔で人々の前にあらわれた『本物の姫』はまた一段と美しく、
その隣で幸せそうに笑っている花婿・レオナルド王子ともども、
人々の歓声と拍手の嵐の中、
輝かしいシュレアルの未来を高らかに宣言しました。
国中の誰もがおめでたい祝賀ムードに
酔い、歌い、笑い、踊り……
それは夜中を過ぎるまで、終わることがなかったといいます。


――キキッ。

石造りの独房に、ネズミの鳴き声が響きます。
そう、ここは牢獄。
シュレアルのお城の地下に備えられた、狭く小さな地下牢です。
かび臭く濁った空気の中、
灯りと呼べるのはか細い蝋燭の光だけ。
しかし、『彼女』にとっては、それがせめてもの救いでした。
明るい光があって、なんになりましょう。
自分のこの新しい、醜く、忌まわしい姿をさらすだけです。
そう、ここに捕らわれた牝のオーク、
かつてリヴェラ姫だった『彼女』にとって、
悪夢は終わることなく続いていました。
偽者は今頃、姫の美しい姿で、
姫の服を身につけ、姫のレオナルド王子と……
枯れ果てたと思っていた涙が、またこみ上げてきます。

――だまされた。
あの女に、だまされた。
悔しい。
悔しい。
くやしいっ!

「ぐっ、グブッ、ブゴッ……ブヒィいいっ!」

嗚咽までが獣じみて、情けなさに拍車をかけます。
醜く太って、涙と鼻水を垂れ流す牝のオーク。
今の姫は、誰の目にもそれだけの存在でしかないのです。
しゃくりあげるたびに、
大きくひろがった耳がびらびらと揺れ動きます。
体中の肉が波打ちます。
生えたばかりの尻尾が感情の動きを忠実に表して、
その存在を主張します。
悲惨というよりは、むしろ滑稽。
たとえ嘲笑の対象にはなったとしても、
誰の同情を誘うこともできないでしょう。
妙に冷静なその自己分析は、傷ついた姫の心を、
さらに土足で踏みにじっていきました。

嫌。
こんなの嫌。
戻して!
助けて!
誰か……ここから出して!

「ブヒぃっ! ブヒイッ、ブギイイ!」

誰もいないことを知っていながら、
姫は獣じみた声で、言葉にならない言葉で叫びます。
いえ、知っていたからこそ、なのかもしれません。
こんな声、誰にも聞かれたくない。
こんな姿、誰にも見られたくない。
でも、何かに感情をぶつけずにはいられない。
だから今、誰もいないこの地下の牢獄で、
思い切り叫ぶことぐらいしか、
今の彼女にはできなかったのです。

その時でした。

「あはっ」

鈴を鳴らすような声が、牢獄の中に響いたのは。
それはリヴェラ姫にとって、この上なく馴染みのある声。
彼女自身の笑い声でした。

「あははははっ、お元気そうで何よりです、お姫様」

芳しい香水の匂いが漂ったかと思うと、
こつこつと可愛らしく軽やかなハイヒールの足音をたてて、
それにふさわしい小さなシルエットが牢の中にあらわれます。

「いやー、疲れた疲れた。
婚礼の儀なんていっても、しんどいだけですね。
こんなに快適な個室でブタみたいに
ゴロゴロなさってたあなたが羨ましいですよ、
あ、そうか、ほんとにブタなんだから
しょうがないですよね、あははっ」

いまやその姿までもリヴェラ姫そのもの。
ふわりと浮べた天使の笑顔に悪魔の歓びをひそませて、
その女は蝋燭の光のもとにあらわれました。
もはやその本性を隠そうともせず、
嬉しそうに嘲りの言葉を投げかけてくるそいつは……
言うまでもなく、彼女から全てを奪った、あの女。
フリーダでした。

   ×   ×   ×

19話へ

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